事業が非常に堅調な企業の社長から、会社の内部留保をいかにして個人に還流してくるかという相談。
このまま放置しておくと、会社の株価も高く事業承継にも差し障るのではないかという状況に対して、逆TAX(リバース)養老保険を使って法人のお金3,000万円を個人に還流した・・・というお話。
状況
クライアント:事業が非常に堅調な企業の代表 W社長
社長は既にこの会社から約2,000万円の報酬をとられ、これ以上報酬を増額しても所得税・住民税あわせて50%もかかってしまう状態。
最後に退職金でかなり個人に支払うことができるが、引退はまだ少し先。
とはいえ、このまま放置しておくと退職金では払い出しきれないキャッシュが会社に貯まり、会社の株価も高く事業承継にも差し障るのではないかという状況。
W社長
給与も上げられない、退職金でも間に合わない・・・これは手詰まりだな・・・
木下
なかなか厳しい状況ですね。
儲かっておられるのは喜ばしいですが、後継者の方に会社を譲られる時に障害になるかもしれませんね・・・
そうだ、「逆TAX(リバース)養老保険」という保険を使い会社のキャッシュをお手元に戻す方法があります。
W社長
なんだい、その「リバースなんとか・・・」っての
木下
通常の養老保険では、満期保険金の受取人は会社で、死亡保険金の受取人は従業員の家族にしますよね。
これは福利厚生目的でよく使われる2分の1が損金にできる保険です。
「福利厚生プラン」としての養老保険の契約形態及び経理処理
契約者 | 被保険者 | 満期保険金受取人 | 死亡保険金受取人 | 経理処理 |
---|---|---|---|---|
法人 | 役員及び従業員 | 法人 | 被保険者の遺族 | 1/2 資産計上 1/2 損金算入 |
「福利厚生プラン」のシュミレーション
1.役員又は特定の従業員のみを被保険者として加入させる場合(支払保険料:100万円)
借方 | 貸方 | 役員又は特定の従業員のみを被保険者として加入させる場合には、支払保険料の1/2がその役員などに対する給与とみなされ所得税課税の対象となります。 |
---|---|---|
保険積立金 50万円 役員報酬(給料手当) 50万円 |
現金・預金 100万円 |
2.全従業員(公平な加入条件であること)を被保険者として加入させる場合(支払保険料:100万円)
借方 | 貸方 | 全従業員を公平な加入条件のもと普遍的に加入させる場合には、損金部分は「福利厚生費」となるため、所得税課税の対象にもなりません。 |
---|---|---|
保険積立金 50万円 福利厚生費 50万円 |
現金・預金 100万円 |
W社長
うん、それはウチもやってるよね。
木下
逆TAX(リバース)養老保険では、死亡保険金の受取人が法人なんです。
通常の定期保険と同じで、1/2は保険料として損金となります。
満期になった場合の満期保険金は社長個人が受け取るので、これは役員報酬ってことになります。
つまり保険料の支払い時に、結果的に支払保険料の全部が損金にできるわけです。
「逆TAX(リバース)」としての養老保険の契約形態及び経理処理
契約者 | 被保険者 | 満期保険金受取人 | 死亡保険金受取人 | 経理処理 |
---|---|---|---|---|
法人 | 従業員 | 役員 | 法人 | 1/2 保険料 1/2 給与 |
W社長
えっ、どういうこと?
木下
1/2は保険料として損金。1/2は役員報酬(定期同額給与として)損金。
つまり、支払った保険料の全額が会社の損金として扱われるということです。
役員報酬部分には当然社長個人の税金はかかってしまいますが。
W社長
なるほど、そんな保険があるんだねえ。
木下
社長が健在で無事に満期を迎えることで、これまで法人が支払っていた保険料の満期保険金を個人で受け取れることになり、会社のキャッシュを社長に払い出すことが可能なるんです。
社長が亡くなられた際のリスクヘッジにもなりますしね。
この場合には、法人が死亡保険金を受け取るのでそれをそのまま会社が遺族に支払う死亡退職金の原資にすればいいわけです。
「逆TAX(リバース)」のシュミレーション
1.通常の逆TAXの場合(支払保険料:100万円)
借方 | 貸方 | 役員報酬となる部分については、給与課税の対象となりますが、法人側では支払った保険料が全額損金となります。 |
---|---|---|
保険料 50万円 役員報酬 50万円 |
現金・預金 100万円 |
2.社長が会社に多額の貸し付けをしている場合(支払保険料:100万円)
借方 | 貸方 | 役員報酬ではなく、貸し付けていたお金の返済として処理することで、貸付金を圧縮することもできます。 役員借入金がない場合、単に役員に対する立替金などとして処理してもOK! |
---|---|---|
保険料 50万円 役員借入金 50万円 |
現金・預金 100万円 |
W社長
それすごいやないか、先生!
よしっ、さっそく手配をおねがいできますか!
その後
総額3,000万円の逆TAX養老保険に加入することで、死亡保障になるとともに、法人側でも節税ができ、なおかつ社長が、約3000万円の満期保険金を受け取れることになりました。
満期保険金には一時所得が課せられるものの、その計算に当たっては、社長が役員報酬として課税を受けていた2分の1部分は、一時所得の計算上必要経費として差し引くことができる。
また、一時所得の計算は、そこから50万円を控除して2分の1を掛けて計算するため、収入金額に対する税金の支払額はかなり抑えることができ、実際に単に役員報酬を増額した場合に比べて約500万円も税負担を抑え、社長個人に3,000万円の資金の還流を成功させた。
今回のポイント