研究開発に使った費用は「試験研究費の税額控除」という制度で法人税額から控除できるのですが、この制度を適用しているのはほとんど大企業ばかり。
では、中小企業が研究開発をまったく行なっていないかといえばそうではないですよね。
WEBビジネスを展開しているITベンチャーや、東大阪に代表される機械部品の製造加工を行っている中小企業には、試験研究費の税額控除を受けれるのに受けられていないと思われる企業が多くありそうです。
状況
クライアント:東大阪にて旋盤加工を行う製造業 T社長
現在は黒字を確保しているが、先細りする元請け企業からの受注への対策として、他の工場ができない特殊形状を加工できる技術の研究を行なっている。
異業種交流会でその技術を長村に語ったところ・・・
長村
社長、その技術の試作や研究に結構お金使っているんじゃないですか?
T社長
そうですねえ。そら、ヨソができひん技術ですから一筋縄ではいかないですよ。
失敗も沢山、時間も山ほどかけてますわ。
長村
先ほどのお話だと現在は黒字ということですよね。
「試験研究費の税額控除」の制度は利用されてますか?
試験研究費とは?
試験研究費とは製品の製造、サービスの提供又は技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究のために要する費用をいいます。
なお、その試験研究費に充てるために他の者から支払いを受けた金額がある場合には、その金額を試験研究費の額から控除する必要があります。
試験研究費 の範囲 |
試験研究を行うために要する材料費、人件費(専門的知識をもってその業務に専ら従事する者に係るものに限られる)及び経費 ※事務職員等のように試験研究に直接従事していないものに対する人件費は対象外。 ※人件費には「専ら」用件が付されており、実務上は少し厳しく解釈されています。 簡単に示すと以下の者が対象となります。
※上場企業の場合、研究開発部門に専任者を置き部門別会計により管理しているケースがほとんど ※人件費以外の材料費や機械装置の減価償却費だけでも対象にできれば儲けもの
ただし、税務調整が必要なものが含まれていないか注意が必要です。 (例:賞与引当金、退職給付引当金etc.) |
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外部に委託する試験研究費 | |
鉱工業技術研究組合法の規定により賦課される費用 | |
対象外 の費用 |
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T社長
いやー、してないですね。
ウチの税理士先生から聞いた話ではあれは大企業向けやと。
長村
いいえ、社長の会社でも活用できると思いますよ。
中小企業でもこの制度で10%以上の節税を行えた例が沢山ありますよ。
T社長
ほんまですか!?
でもウチの仲間の会社でこの制度利用しているのんは聞いたことありませんけど。
新聞なんかで出てるのは大企業の話だけのような気がしますけど・・・
長村
なぜ大企業しか適用を受けていないかといいますと、会社の経理を税理士事務所に丸投げにしているような中小企業の場合、税理士事務所の担当者では会社の研究開発の内容を十分に理解することができないからなんです。
そのため、試験研究費の集計を行えない。そういったことが主な理由じゃないでしょうか。
これはある意味、税理士事務所の怠慢かもしれませんが、顧問料3万円で記帳代行までやっておられる事務所さんではこのような制度の利用について提案する余裕はないんでしょうね。
T社長
たしかにウチも税理士先生にそんなに顧問料払ってませんわ・・・
長村
まとめると・・・
という感じでしょうね。
これは非常にもったいないことですよ。
T社長
ほんまですなあ・・・私らはどうしたらこの制度使えるようになるんでしょうか?
長村
まずは、ご自身会社の研究開発の内容を分析し、適切な会計科目に分類することですね。
それから、会計上の研究開発行為の分類をもとに、税額控除の対象となる試験研究費になるかどうかを判定していけば良いと思います。
T社長
なるほど!ほんなら早速今やってる研究開発について分析してみますわ!
ありがとうございます!また相談させてください!
その後
「試験研究費の税額控除」を活用することで、特別なキャッシュアウトなしに、試験研究費の額の12%相当額の節税が可能となります。
この会社様の場合、研究開発の内容を整理すると年間研究開発費に500万円程度支出してることがわかりました。
この制度を活用し50万円以上の税額控除を受けることができました。
今回のポイント